「失語症」とは「脳梗塞・脳内出血等の脳血管障害や、交通事故・転倒等による脳の外傷、または脳腫瘍によって、大脳の言語野が損傷されたために起こることばの障害の事」を言います。
「失語症」になると多かれ少なかれことばの全ての面に障害が出てきます。声は聞こえているのにことばの意味が分からない「聴く」ことの障害。声も出て口も動くのにことばにならない、間違った音やことばになる「話す」障害。文字の意味がわからない「読む」障害。文字が書けない「書く」障害。「失語症」の状態によく例えられるのが、周りの人がみんな外国語を喋っている所へ一人ポツンと行ったような状態です。想像してみてください。周りの人が喋っている内容は聞こえているけど、さっぱり意味がわからない。自分の頭の中に言いたいことがあるのに、ことばが通じないから何と言っていいかわからない。書いてある文字も意味がわからない。もちろん文字も知らないから書けない。そんな状態なのです。
このような状態の人に、私達はどうやって話しかけたらいいでしょう。ことばは通じないのですが、好意的に笑顔で話しかけてみませんか。「お腹はすいてませんか?」と自分のお腹をさすって身振りで表現してみてはどうでしょう。実際に食べ物を持ってきて「これを食べませんか?」と聞くともっとわかりやすいかもしれません。きっと首を振って食べるか食べないか返事してくれるはずです。
失語症の状態は人それぞれで、ほとんどすべての面でことばが使えない方、うまく話せないけど人の言っていることは少し理解できる方、複雑な会話は難しくても日常の簡単なやり取りならできる方等様々です。その人の残された言語能力をうまく活用することは重要ですが、周りの人がその人の状態をよく知り、「ゆっくり、短いことばで話す」「具体的な物や絵や文字を見せながら話す」「身振り手振りや指差しを使いながら話す」「はい・いいえで答えられるように質問する」等その人とうまくコミュニケーションをとることで伝わることはどんどん広がっていきます。
「失語症」になっても、周りの人に協力してもらいながら、あきらめずコミュニケーションをとっていただきたいです。