転倒について~転ばぬ先の杖~ 第1回目

新緑が目に鮮やかなすがすがしい季節となりましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか?
理学療法士の杉野です。
今回は医療・介護の現場で比較的良く耳にする「転倒」について2回に分けてお話ししたいと思います。

「転倒」とは、転ぶ、滑る、つまずくことですが正確には
「自分の意思に反して足底以外の体の一部が地面や床につくこと」です。
人間誰しも一度は転んでけがをしたことがあると思います。そして転んだことには必ず要因があります。

 例えば、
・不注意(よそ見、他に気を取られていたなど)
・バランスを崩した(滑りやすい環境で転んだ、不安定な台の上からバランスを崩したなど)
・段差につまずいた など

これらの要因は事前に防げるものと不可抗力によるものがあり、転倒する側になんらかの問題がある場合や、環境的問題がある場合などがあります。
また、年齢とともにこの「転倒」が大きなけがや障害に結びつくこともあるため、特に高齢の方の転倒には注意が必要です。

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厚生労働省の「人口動態調査」(平成26年~令和2年)によると、高齢者の「転倒・転落・墜落」による死亡者数は「交通事故」の約4倍という結果があります。
また、65歳以上の家庭における「転倒・転落・墜落」による死者数の推移ではほぼ横ばいで、80歳以上で急激に増加するという報告があり、高齢になればなるほど家庭内での転倒が増えています。

では、高齢者の転倒の主な原因は何でしょうか?

① 加齢による身体機能の低下
加齢に伴い身体機能が徐々に低下し、筋力、バランス能力、瞬発力、持久力、柔軟性が衰えとっさの防御動作が出来ず、転倒してしまう。次の動作までの予測、判断が鈍り見当違いに体が動いてしまう。
② 病気や薬の影響
年を重ねるといくつもの病気を抱え何種類もの薬を飲んでいるため、そのために薬の作用・副作用で立ちくらみやふらつきが出て、転倒しやすい状況になってしまう。
③ 運動不足
① に関連して身体機能が低下してしまうと外に出るのが億劫になり、一度転倒してしまうと恐怖と不安で自宅に引きこもりがちになり運動不足になってしまう。

これらの原因に対し、私たち理学療法士は訪問先で利用者さんに対し、疾患や服薬状況、身体機能の評価をします。評価とは筋力、関節可動域、疼痛の原因を調べることです。その評価をもとに利用者さんにあった運動プログラムを立てて実施します。

このようにして私たち理学療法士は転倒する側の何らかの問題解決につながればと日々考えて最適なプログラムを検討しています。

次回第2回目は転倒を防止するために効果的な運動や自宅で工夫できることをご紹介します。