転倒について~転ばぬ先の杖~ 第2回目

理学療法士の杉野です。
第1回目の前回は転倒してしまう要因についてお話をしました。
第2回目の今回は、転倒を防止するのに効果的な運動、そして環境的に整えられることについてお話します。

〈効果的な運動〉
 ①ももあげ
  動かす筋肉:腸腰筋。
  作用:歩くときに足がしっかり上がる。姿勢を保ち骨盤を安定させる。
  方法:椅子に座って左右交互にゆっくり10回を2~3セット。

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 ②膝伸ばし
  動かす筋肉:大腿四頭筋。
  作用:立ち上がるとき、歩くとき、階段昇降のときに働く大きな筋肉。
  方法:椅子に座って膝をしっかり伸ばしそのまま3秒止めて下す。
     左右交互に10回を2~3セット。
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 ③爪先上げ
  動かす筋肉:前脛骨筋。
  作用:歩くときに足を前方に踏み出す。動作時につまずかないようにつま先を持ち上げる。
  方法:椅子に座って左右一緒につま先を3秒かけて上げ、一旦停止し3秒かけてゆっくり
     おろす。10回を2~3セット。
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 ④踵上げ
  動かす筋肉:下腿三頭筋
  作用:立ち上がる時、立つ時に持続的に働く。
     (足の踏ん張り)歩行の推進力、低下するとつま先が地面や段差にひっかかる。
  方法:椅子に座って踵を3秒かけてゆっくり上げ一旦停止し3秒かけてゆっくり下す。
     10回を2~3セット。
 体操4.png


移動手段として車いすや歩行器、杖を選定し移動手段の練習(歩行練習や車いす操作等)を実施します。これが環境的問題の解決策です。
先ほどお伝えしたように転倒は主に自宅で起こることが多く、実際目にする転倒場所や工夫について挙げます。

<居間>
・コードに引っかかってこける。→配線は歩く導線をさけ、壁にはわせる。
・カーペットや敷居の小さな段差につまずく。→使用しないかカーペットに滑り止めを敷く
・座布団や新聞などにつまずいたり滑ってこける。→床や導線に物を置かない。

<廊下・階段>
・手すりをつける。
・床に物を置かない。
・夜間廊下を通ってトイレに行ってこける。→足元が見えるようにセンサー照明をつける。
・滑りやすいスリッパははかない。滑り止め靴下を履く。
・階段に滑り止めをつける。→100円均一やホームセンターで購入できます。

<ベッド>
・ベッドから転倒、転落する。→ベッドの片面を壁に設置し、転落を防ぐ。万一落ちても
              衝撃緩和のため寝るときは低床にする。ベッド柵をつける。

<玄関>
・手すりをつける。
・靴の着脱の時にふらついてこける。→椅子をおき椅子に座って靴の着脱をする。
・上がり框が高い→踏み台を置く。
<浴室>
・椅子に座って着替える。
・入口の段差が高い→すのこやスロープを設置する。
・浴槽から立ち上がる際に滑ってこける。→浴槽内に滑り止めマットを敷く。
・手すりをつける。
・浴室には立ち上がりやすいシャワーチェアを置く。

私たち在宅ケアスタッフは転倒、転落によって介護を受けられる方、または介護状態の中で転倒の場面を何度も目にします。もちろん転倒を防げないこともありますが、現在、お元気でお過ごしの方にもこの転倒の原因や転倒予防策を知っていただき、出来るだけ転倒しない方法をとっていただければと思います。
最後に先日、介護を受けていない一人暮らしの77歳の母と交わした会話です。

母:「実はこの前また自転車でこけたの。」
私:「え?また!!もう自転車には乗らないでって言ったのに大丈夫だった?」
母:「・・・あの・・・腰の骨折れてた。」
私:「え!!なんで言わないの!」
母:「だってまた怒られると思ったし、足が悪いから買い物には自転車が楽だから」
私「・・・うーん・・・・そうかあ。」
母「でも気をつける。やっぱり少しは運動しないとね。こけないように頑張る。迷惑
  かけたくないし。」
私「うん、そうだね。でも無理したら危ないから手伝えることあったら言ってね。」
母「ありがとう。気つける。」

と、理学療法士であっても現実には母の転倒すら防げていません!!
大丈夫、まだ自分でできる、子供に心配かけたくない、人の世話になるのは嫌、何かあると
怒られるという感覚の母親。
○○したらダメ!○○した方がいい!全然いうこと聞かない!とついつい非定型で伝えてしまう私・・・。

もっと優しい言葉がけができ、ご紹介した具体策を提案すれば転倒を防げたのでしょうか?
このブログをみて身近なご家族や地域の方に是非「転倒」について話してみて、予防できる体操や運動、環境調整ができればやってみて下さい。それで少しでも大切なご家族が元気で健康寿命をのばすことができれば幸いです。