最期まで生ききる利用者さんに寄り添う経験を通して大切にしたい事

y24_1_1.png謹んで新年のお慶びを申し上げます。当ステーションでは、「自宅で過ごす利用者さんやご家族を最期まで支える存在でありたい」という思いで取り組んでおり、私が経験した在宅看取りのケースとその影響についてご紹介します。

2023年には12名の在宅看取りに関わらせていただきました。在宅看取りで初めて経験したことの一つは、"息を引き取る瞬間"に立ち会ったことです。

81歳男性、肺癌の方は緊急訪問した際に看護師の目を見て頷いた後、1分ほどで息を引き取られました。ほんの少し前まで会話が出来ていたお父様がお亡くなりになり、傍にいた2人の娘さん達は動揺していましたが、「ご本人が娘さん達を思って、看護師が来るのを待ってから最期の時を選ばれたと思う」とお伝えすると、「父の優しさなんですね」と受け止めていらっしゃいました。

51歳男性、膵臓癌の方の場合は、退室前に最後の確認をしようと思い状態を見ると徐々に呼吸の間隔が伸びていくので、退室せずに見守っていると息が止まりました。その時に、奥様から「一人の時じゃなくてよかった。一緒にいてくれて、傍にいてくれてありがとう」と、涙ながらにお言葉を頂きました。

y24_1_2.pngお看取りに対するご家族の強い不安がこの2人の共通点であり、最期の時に看護師が居合わせたことは偶然ではなく、ご本人がご家族のためを思って"最期の時を選ばれている"と思うこの感覚は、看取りの回数を重ねるごとに強くなっています。

最期まで生ききる利用者さんに寄り添う経験が、自分自身の人生にも大きな影響を与えています。自分の命である時間について、誰と・どのように使うのかを真剣に考え、生きていく大切さを教えて頂いているように感じています。毎日顔を合わせることのできる家族や仲間と笑顔で温かなコミュニケーションを育むために、日々の小さな心遣いをもっと大事にしようと思います。利用者さんが身をもって教えて下さったことや、もっと生きたかったであろう想いを引継いで、自分の人生に落とし込むことが、利用者さんへの最大の恩返しではないかと思いながら、毎日を過ごしています。

y24_1_3.pngターミナルの方と共に歩む貴重な時間を「辛い」だけで終わらせないように、スタッフには3つのことを身に付けてほしいと思っています。それは、①専門的知識を磨くこと、②知識が伝わるコニュニケーション能力を上げること、③ネガティブなこともありのまま受け止められる心の柔軟性(ネガティブケイパビリティ)です。

今年は在宅看取りを通して、自分自身を深く見つめながら全ての状況で柔軟に対応できる【優しくて強い人材】を育て、個々の人生についても語り合える職場にしたいと思っています。 2024年も精一杯、精進しますので、変わらぬご愛顧のほどよろしくお願い致します。

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