エンディングノートのすすめ

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理学療法士の杉野です。みなさんは「エンディングノート」をご存じでしょうか?エンディングノートとは、人生の最期を迎えるにあたり自分の思いや希望を家族や友人などに元気なうちに確実に伝えるための手段のひとつです。遺言書との大きな違いは、現在から亡くなった後のことまで幅広く書けること、法的な効力はないことです。

 近年「終活」という言葉が出てきました。多くの人が長生きになり、モノやサービスが溢れる幸せな社会と思われますが、老後の長期化による生活資金の不足、医療費や介護費の増加、などマイナスの部分も多く存在します。自分が望む最期を迎えるには、知識をつけ、選択をしなければなりません。自分の意思を自分で伝えられなくなったときのことを想定し「終活」が必要になったわけです。終活は「最期まで自分らしくいられるために、元気なうちに前向きに、自分が死ぬまでのことと、自分が死んだ後のことを具体的に考え、希望を伝え、準備すること」です。そしてエンディングノートは終活の道標として綴るものです。実際にどのようなタイミングでどういうことを書くのでしょうか?

<エンディングノートを書くタイミング>

・人生の節目(定年退職・還暦など)・告知や余命宣告を受けたとき

・環境が変わったタイミング(子どもが巣立った、引っ越しなど)

 <エンディングノートに書くこと>エンディングノート.jpg

・名前、生年月日などの基本情報 ・保険証などの証明書の情報

・身体、健康に関する情報、保険情報、財産、年金情報

・看護や介護、告知事項や終末医療への希望、葬儀、お墓関連の希望   

・遺言、遺産、家族情報、親しい知人、友人、ペットについて

・自分史(出生時、出生から現在まで)    

・特に記憶に残っている思い出、メッセージ など

このように、エンディングノートを書くことで自分の気持ちを整理・確認でき、これからの人生を前向きに考えることができると言われています。気持ちが変われば何度でも書きなおすことが出来ることも特徴です。

 私がこのエンディングノートを知るきっかけになったのは父が亡くなったことです。

父は「非結核型抗酸菌症」という肺の病気で5年7ヶ月の闘病の末、80歳で入院中の病院で亡くなりました。訪問看護を利用していたこともありましたが、治らない病気との不安な毎日、入退院を繰り返し、介護疲れで憔悴しきっている母の姿も見て、この入院を最後に症状が楽になったら自宅で介護しようと家族で話し合い、本人にも承諾してもらって入院しました。見舞いに行ったときは少し元気になって冗談を言っていた父でしたが、退院前のカンファレンスの日に急変して亡くなりました。入院前に痩せ細った体を拭いてあげたことが思い出です。父の最期がこれで良かったのかと後悔が残っています。生前にやりたかったことはなかったか?もう少し話をしたかったです。その後でエンディングノートの存在を知り、父が元気なうちに書いてもらえばよかったなと思い、今は母と話しながら母にエンディングノートを書いてもらっています。ノート書いてる.png

 私は現在訪問看護で理学療法士として日々在宅介護の現場で働いていますが、父の死を通して本当の意味での人の命の尊さを知りました。そして自分の人生を悔いなく生きるために、エンディングノートを活用してみてもいいのかなと思いました。

 このブログを読んでみなさんの家族や身近な人、ご自身の何かの一助になれば幸いです。