食事療養のサポートを現場から発信

第65回 日本栄養・食糧学会

こんにちは。腎臓プロジェクトメンバーの島田・宮川・辻本です。

5月に東京・お茶の水女子大学にて第65回 日本栄養・食糧学会大会が開催されました。

今回は島田がプロジェクトメンバーを代表して
『増加しつつある腎臓病患者への在宅における食事療養サポートの取り組み』を発表してきました。

以下は発表した内容です。

【背景】毎年、慢性透析患者総数は増加を示している。
我々在宅食生活サポート事業部においても、腎臓病や透析治療を受けておられる利用者が年々増えてきていると実感している。腎臓病の治療の目的は慢性腎不全への移行を予防し、少しでも透析治療を遅らせることにあり、それには、食事療養に取り組む必要がある。

【目的】在宅で食事療養に取り組むときの問題点を調べ、それらの解決にあたり訪問・相談や配食を組み合わせることで腎臓病の食事療養を継続できるかを検証した。

【方法】サービス希望者に対して当社の管理栄養士が、個別訪問・相談を担当し、配食を参考に、本人や家族、またホームヘルパーに対して栄養指導等を行なうことで食事療養の継続をサポートしている。今回取り組みの中で得られた症例を2例発表する。

【症例】症例①82歳、男性。10年前から腎機能が低下し、医師から減塩とたんぱく質制限を指導されサポート開始。定期的に栄養相談を行ないながらヘルパーさんに昼食調理のアドバイスやレシピの提供を行い、夕食は栄養コントロール食を利用され療養中。透析寸前と言われたが現在はCr4.7mg/dlで推移し腎機能を維持されている。


症例②93歳、女性。高血圧と慢性腎不全から高カリウム血症で入院され在宅復帰と同時にサポート開始。カリウム除去の為の方法を指導し、定期的な訪問にて毎月の検査数値の確認を行なう。値が安定してきたこともあり服薬が中止となりK4mEq/dlで管理でき、Crも2.0mg/dlで推移している。


【考察と課題】症例では食事療養を継続できていることで、透析導入も避けられている。しかし、まだまだ寛解を得られるケースは少ない。今後も慢性腎臓病の利用者の関わりが増加すると予想され、さらなる多岐に渡るサポート力が必要であると認識しており、個々のスキルアップと合わせて、ケーススタディや経験をチームとして活用できるよう取り組んでいきたい。

発表後の質疑応答では、
「症例数をあつめて、集計としてどれくらいの方がよくなっているのかを
 調べられるともっとおもしろい」とか、
「糖尿病性腎症では食事療養していても、腎症の進行が早く
 なかなかうまくいかないが、在宅でどのような指導をされているのか教えてほしい」や
「震災の影響で、不安ながらも施設から在宅に戻らざるを得ない人たちも沢山いると聞くと
 このようなサービスがもっと拡がってほしいと思います」など様々なご意見やエールを
いただきました。

個人的にうれしかったのは質疑応答の後で個別にご挨拶いただけた方から
「この演題のように、人を対象とした発表がまだまだ少ないので
 これからも是非、たくさんの報告をしていってくださいね」と後押しをいただけたことです。

ラットを用いた比較対象実験や、大学・病院などで多くの患者を対象した研究と
比べると、今回発表した内容はあくまで一症例にすぎないと認識しています。
でも、在宅の現場では患者さまがどのようなことに困っていて
どのように食事療養をされているのかを伝えることができるのは
はーと&はあとの管理栄養士ならではのよさであり、使命だと感じました。

今後は、ひとり・ひとりの声を大切に大事に集めて、もっと大きな発表とインパクトを残せるよう
取り組んでいきたいと思います。

はーと&はあと 腎臓プロジェクト 管理栄養士 島田天心

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